この数年私たちが学んだことがあるとすれば、予測はまったく当てにならないということです。
世界的なパンデミックや国際紛争は、工場の閉鎖、航空便の欠航、港湾の停滞、人手不足、輸送ルートの変更、輸送所要時間の長期化、さらにはサーチャージや燃料価格の高騰という形で現れています。「サプライチェーンの問題」は、ほぼあらゆる状況の説明に使われるフレーズとなっています。
しかし、たとえ複雑な時代でも、経験豊富な荷送人は荒波を乗り越え、競合他社より一歩先を行く方法を見つけることができます。細部に注意を払い、ルールを守り、自分の不注意によるミスを避けるだけで、サプライチェーンのプロセスがスムーズに動いていないときでも貨物をスムーズに運ぶことができます。
先日、UPS®のグローバルフレートフォワーディングの幹部が集まり、国際貨物の荷送人がサプライチェーンで起きる厄介な遅延リスクを軽減するための良識的なヒントを提供するために意見を交換しました。
1. 一人で抱え込まない
サプライチェーンのキャパシティに問題が生じた場合、それまでスムーズに機能していたものがまったく機能しなくなることがあります。そのため、選択肢を用意しておくことが重要です。優れた戦略とは、しっかりした計画、優れたバックアップ計画、そしてフレートフォワーディングサービスから始まります。
「優れたフレートフォワーダーなら、荷送人のために思いもよらないような選択肢を用意してくれます」と、UPSグローバルフレートフォワーディング担当バイスプレジデントのキース・アンドレイは述べています。「荷送人が運送業者と直接交渉する場合は、異なる輸送手段、異なる港、異なる船会社さえ選択できます。フレートフォワーダーは需要とニーズを正しく理解し、たとえば緊急注文に応じるために混雑の少ない別の港を選ぶ、インターモーダルで内陸港から鉄道輸送に切り替える、輸送手段を切り替えるなど、運送業者のルート選択について荷送人が決定を下せるよう支援できるでしょう。」
しかし、優れた計画の策定は、ゴタゴタが発生するかなり前に行われることがしばしばあるため、その場の状況に合わせて調整する必要があります。「荷送人は、サプライチェーン内のすべての関係者の能力を頭に入れて、ためらわずに輸送貨物の優先順位を決め直す必要があります」とアンドレイは指摘しています。
フォワーダーとの良好な連携に加え、買主、工場、運送業者、荷受側の配送センターとの間のシームレスなコミュニケーションを確立することで、港から港への輸送日数を短縮し、顧客の手に届く最後の配送区間も短縮できます。
2. 今日の予測にはより良い予測が求められる
激動の時代には、正確な早期予測が欠かせません。UPSグローバルフレートフォワーディング・グローバルストラテジー＆IEのバイスプレジデントであるジル・オデルは次のように述べています。「通例として、フォワーダーは貨物が実際に動くかなり前にスペースを購入します。荷送人がフォワーダーに、『6か月後に新しい製品ラインが入ります』と伝えておくことができれば、その時にスペースが利用できるよう確保しておくことができます。」不安定な状況をうまく乗り切るために、フォワーダーは洞察力に富む事前予測に基づいて、労働力、スペース、その他あらゆる事項を計画し、軌道に乗せることができます。
考慮すべきその他の点には、納期を前倒しして出荷すること、在庫計画を先取りすること、適切な製品構成に注力すること、荷受人の処理能力を超える注文をしないことなどが挙げられます。オデルはさらに、「今日では、ギリギリの予測は、これまで以上に失敗を招くだけでしょう」と続けています。
3. ルートや輸送モードの最適化を躊躇わないでください。
予期せぬ事態はいつ来るともわかりません。ご存じのとおり、人手不足や港の閉鎖、スエズ運河の物流混乱などによって、当たり前のことがたちまち覆されてしまいました。迅速にルートを見直して最適化を行うことで、遅延を最小化または軽減できます。混雑するレーンを回避するために別のルートで運ぶことは可能か？別の場所から調達できるか？別の輸送手段を利用するために貨物のサイズを調整できるか？あるいは、いつもと異なる輸送手段を利用できるか？
前述のキース・アンドレイは次のように述べています。「現在起きている大きなシフトのひとつは、荷主人の考え方が『輸送単位あたりのコストを最低限に』から、『エンドツーエンドで最も効率的な輸送に』に移行しつつあることです。エンドツーエンドの輸送においてどのような選択肢があるか、輸送手段ごとに、あるいは積地や発地空港ごとに把握すれば、最適なフローを決定できるでしょう。」
また、航空、海上、鉄道貨物輸送に合わせて注文サイズを調整し、最適化することで、輸送日数を短縮できる場合もあります。「顧客側の買主やプランナーは、そういうことには慣れていません」とアンドレイは指摘しています。「しかし、単位あたりのコストよりも、注文サイズやカートンやスキッドの構成を輸送手段に合わせて最適化することに取り組めば、商品がサプライチェーンを最速スピードで流れる可能性が高くなります。」
4. 通関では詳細が重視される
貨物遅延の最大の原因のひとつは、税関検査です。さらに悪いのは、輸入特権の喪失です。たしかに、サプライチェーンのあらゆる場面で求められるのはスピードですが、通関書類やコンプライアンスに関しては、近道は災いのもとです。UPSグローバルフレートフォワーディングのグローバル通関業務＆貿易アドバイザリーサービス担当のバイスプレジデントであるブルース・キッドウェルは、「関税額を下げるためにコンプライアンスをないがしろにしたり、通関書類を改ざんしたり、分類を変えたりしようとすると、貨物を危険にさらすことになります」と述べています。
それで一度でも税関に目を付けられたら、輸入ライセンスを失うリスクや、取り扱うすべての貨物が検査対象になる可能性もあります。税関は多くの情報を要求しますが秩序立った方法で細部にまで注意を払い、正確を期すことが、遅延を避ける最善の方法です。簡単に避けられる落とし穴をご紹介しますので、荷主人は以下の点を確認してください。
- フォワーダーと通関業者が、荷主人の連絡先、Eメール、電話番号を知っていること。
- 荷主人は通関業者を選択したら、委任状を定めてアカウントを開設すること。
- 荷主人は税関やその他のPGA（パートナー政府機関）に提出する必要がある書類を用意すること。どの国にも、税関以外に通関に影響を及ぼす可能性のある政府機関が存在します（たとえば米国では、合衆国魚類野生生物局、FDA（アメリカ食品医薬品局）など20以上の機関があります）。
- こうした確認は、貨物が港や航空貨物施設に到着するまで待つ必要はありません。
5. まずコンプライアンスを重要視する（「フォーカスオンコンプライアンス」）
ジルは、「簡単なことのように思えますが、フォワーダーや通関業者に、正確な貨物の説明を提供することが大事です」と述べています。この情報がなければ貨物は強制的に停止され、品目を適切に分類するために顧客に連絡しなければなりません。これは大変な事態です。EUの新しい輸入管理システム2（ICS2）のように、輸送前に品目分類を事前に提供するよう輸送会社に求める国が増えています。
ジルは、通関業者がよりスムーズに品目を分類できるようにするための簡単なアドバイスを提案しています。「私はこれを『4語ルール』と呼んでいます。4つの単語で品目を説明できれば、通関業者も品物を分類しやすくなります。たとえば、『Tシャツ』と言う代わりに『綿ニットの女性用Tシャツ（cotton-knitted women’s t-shirt）』と言うのです。」
貨物に含まれるパーツとその説明、関税コードの簡単なリストを通関業者に事前に提供してください。これらを業者のシステムに自動的に読み込ませることで、プロセスの自動化を促進し、通関保留を減らすことができます。
ジルはさらに、「最後に、UPSでは、配送を開始する前に、一般的な荷送人向けの書類のサンプルを私どもに送付していただくようお願いしています。そうすれば、『この売主のインボイスには不明な点がある』など、内容を確認したり、比較したりできます。この書類確認は、海外では特に重要です」と付け加えています。
事前に計画を立て、予測に基づいて空きスペースを確保しても、現実には、たとえばロサンゼルス港の沖合で貨物船が立ち往生した場合、それを解決するために通関業者にできることは限られています。遅延はあるものです。そのため、これまでより余裕をもたせて、本当に必要な在庫を優先して、フォワーダーに品目の取り扱い順位を理解してもらいましょう。そして、早めに、正確に出荷することです。上記の5つのアドバイスを参考に、サプライチェーン市場の混乱に少しでも秩序をもたらすことができれば幸いです。
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